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2009年5月8日 更新 かがわ経済ナビ

決算書の読み方(1) 資産について 現在の経営環境の下、経営者にとっては自社の財務内容の強み・弱みを理解し、収益力をアップするとともに、財務構造の改善を図り、より強固な企業体質へ脱皮していくことが必要です。
そこで5月、6月は決算書を理解するためのポイントについて解説したいと思います。

今回は、貸借対照表における「資産」です。 資産とは、会社の財産という意味ですが、貸借対照表の資産の部に示されている資産を理解する上では、財産価値としての資産という視点とともに、調達された資金が「何に(資産科目)」「どれだけ(金額)」運用されたかという「キャッシュフロー」の視点が必要です。特に今日では、資産効率性と財務安全性を高め、キャッシュフローの流れを良くし、手許流動性を高めておく必要があります。

資産に関する主な財務分析指標

資産は流動資産、固定資産、繰延資産に分類されます。 流動資産では、(1)流動比率を高め(業種業態により異なりますが一般的には150%程度以上あれば良好)、手許流動性を確保すること(1.5カ月程度)、(2)貸倒れが発生しないよう売上債権管理の精度を高めるとともに売上債権回転期間(月数)の短縮と仕入債務回転期間とのバランスを崩さないこと、(3)過剰在庫や不良在庫の発生を避け棚卸資産回転期間(日数)の短縮を図ることが大切です。

固定資産では、財産価値としての視点として、(1)含み損を抱えた固定資産の有無と減損処理(遊休土地、不採算事業における土地・建物・機械設備、時価の著しく下落した有価証券などに対する評価)の要否、(2)預金、有価証券、不動産の担保力の程度の把握が必要です。

キャッシュフローの視点としては、(1)設備投資とその調達資金(自己資金、増資、長期借入金)のバランス、(2)借入金の返済額と返済資金の原資(減価償却費、税金控除後の利益)のバランスの分析が大切です。過大設備投資の結果、キャッシュフローが悪化してしまうことは避けねばなりません。

決算書のポイント(貸借対照表・資産)の詳解

貸借対照表における「資産の部」で表わされる資産の性格

  1. 取得した金額を表す資産としての性格

    取得価額をもって評価するという現在の会計の基本ルールに則って示された資産としての性格です。商品などの在庫(棚卸資産)、株式などの有価証券、土地・建物・機械等の有形固定資産などの貸借対照表に計上される金額は、原則、取得した金額を基に定められた会計のルールにより算出されます。例えば、商品在庫の金額を決定する際、同一商品で購入時の単価が違う場合には「先入先出法」「移動平均法」などにより算出しますし、建物・機械などの金額は定額法や定率法などの「減価償却」を通じて購入時の取得価額から使用に伴う価値の減少分を減額して算出しています。

    会計学的には「取得原価主義」といい、株主への配当可能利益の算出や法人税などの税金計算の基になる利益を計算するために、現在の会計の基本となっている考え方です。
    しかしながら、商品価格が下落した場合、保有する上場株式の相場が下落した場合には、下落した価格で評価しなおす必要があります。この考えは「低価法」といい、取得原価で示された資産価値を補正し評価を下げることになります。
    さらに、著しく資産価値が下落した場合には、強制的に評価を下げる必要に迫られます。昨今の金融危機に際して著しく相場の下落した長期保有目的の株式(上場非上場を問いません)や投資信託は、評価減の対象になります。また、遊休不動産はもちろん、事業用の不動産でも不採算部門であれば、評価減しなければなりません(減損会計)。

    このように、取得価額を基礎としながらも、評価の下がった資産については評価減をして、含み損失を抱えない本来の財産価値を表すという会計のルールがあります。これは、決算書(貸借対照表など)を見る株主、取引先、金融機関に会社の実態をより正確に開示(ディスクローズ)するためです。

  2. 財産価値を表す資産としての性格

    前述のように、取得価額を基礎としながらも、会社の実態をより正確に開示し、経営者の説明責任を果たすために、時価が下落した場合には時価により資産を査定・評価する会計ルールが導入されています。(有価証券の場合には評価益を計上する場合があります)

    現状では、完全に全ての資産を時価により表すという「時価主義会計」にまでは至っていないので、会社が有している含み益(古くから所有している土地などの評価益)を計上することは認められていません。金融機関が企業の担保力を評価する場合は、時価を基に査定した金額(例えば、土地であれば不動産鑑定評価額や路線価の7割など)で評価しますので、含み益のある土地を有している場合には担保力は増加しますが、含み損のある土地を有している場合は担保力が減少します。
    取得原価主義の考えの基本は、企業の「継続性」という前提での会計ルールになっているので、企業の継続性という前提が崩れた場合には、完全な時価評価になります。特殊な場合ですが、会社更生法や民事再生法での財産評定の場合に作成される清算貸借対照表などがあります。なお、この場合の時価は処分可能価値での評価になります。

  3. 資金(キャッシュ)の運用(行き場)を表す資産としての性格

    会社の資金の運用(行き場あるいは辿り着く先)としての性格です。企業活動では調達された現金預金(株主からの出資や金融機関からの借入金など)は様々な形態に使われ、その使われ先の資産の性質により、会計のルールにより「資産」として分類されます。例えば、商品を購入しその代金として預金を支払った場合には、「現金預金」は「商品」という棚卸資産として運用されたことになります。商品を掛けで販売し代金が未収の場合は「売掛金」という債権として運用されていることになります。そして、「売掛金」が無事に入金されれば再び「現金預金」として手許の資金となります。

    昨年末から今年にかけて自動車や家電の販売が急減し在庫が増加した結果手許資金が減少しました。メーカー大手各社が急激に在庫圧縮に動いたのは、多額の資金が在庫として運用され手許資金が乏しくなり、企業の血液たる「資金」の流れが悪くなるのを防止するためです。
    資産が過大にあるということは、一面では財産力があるといえますが、反面では資金が固定化し自由に使える手許資金が乏しい場合がありますので要注意です。企業経営では効率よく資産が運用され、資金が十分に回っている状態を保つ必要があり、貸借対照表の「資産」は、企業の資金の流れの一定時点での状況が示されています。

    なお、キャッシュフローについては、6月で解説予定です。

  4. 経営分析の対象としての性格

    「資産」を分析して、会社の安全性、経営効率を分析できます。
    安全性としての比率としては流動比率、当座比率、固定比率などがあります。
    効率性としての比率としては総資本回転率(回転期間)、棚卸資産回転率(回転期間)、売上債権回転率(回転期間)、固定資産回転率(回転期間)などがあります。

    皆様も自分の会社の貸借対照表をもう一度開いてみてください。「資産の部」を、取得金額を示す資産として、財産価値を表す資産として、キャッシュの運用先として、経営分析の対象として、などいくつかの視線で「資産」の持つ意味を再度問いかけてみてください。

資産を読む個別ポイント

【流動資産】

流動資産とは一年以内に資金化できる資産、または正常な営業活動の流れの中にある資産です。一年を超えるものでも、建設業における長期請負工事や酒造業における長期貯蔵酒も流動資産となります。

流動資産と対比されるのが「流動負債」(一年以内に支払いを要する債務。次回で説明予定)です。流動資産÷流動負債×100が「流動比率(%)」として財務安全性を計る重要な指標の一つです。100%を下回る場合は要注意です。なぜなら一年以内に資金化できる資産より一年以内に返済しなければならない債務が多いからです。一般的には120%から150%が望ましいとされていますが、業種業態にもよります。日々キャッシュが入ってくる小売業の場合は仕入れを掛けで行っていれば流動比率が100%を下回っても資金繰りは回っていきます。
流動資産の中でも換金しやすい資産が「当座資産」と呼ばれるものです。換金性の高い資産であるため、当座資産を多く持っている会社は支払いの能力が高いといえます。
「当座比率(%)」は当座資産÷流動負債×100で示され100を超えれば資金繰りは良好といえます。
さらに詳しく分析すると、「現金比率(%)」は現金預金÷流動負債×100で示され、50%以上あれば理想的といえるでしょう。

また、現金預金について、売上高との関係では「手許流動性」があります。保有すべき現金預金がどの程度あれば資金繰りに支障がないかを示す重要な指標です。手許流動性は、現金預金÷1ヵ月の売上高で示されます。すなわち、手持ちの現金預金は売上の何ヶ月分あるかを示しています。一般的に中小企業の場合、1.5カ月分程度は必要でしょう。毎月綿密な資金繰り管理をしていれば別ですが、仕入れ先への支払、従業員への支払、諸経費の支払い、借入金の返済、そして、売掛金入金の一時的遅れなどを考えると、多少の余裕は必要です。

『当座資産』
  1. 現金預金
    通貨、小切手(他社振出)、預金・貯金、金銭信託などです。
    将来の設備投資資金などに備えて保有している定期預金や金融機関からの借入金の担保となっている定期預金などは、通常の支払資金と区別して残高管理しておくのが望ましいといえます。
  2. 受取手形
    手許で保有している受取手形(金融機関への取り立て依頼分を含む)の他に、割引手形や裏書手形の取扱いも重要です。決算書上は資産の部に受取手形、そして負債の部に割引手形、裏書手形として両建てして計上する場合と、割引手形や裏書手形は計上せず注記で示す場合とがあります。割引手形や裏書手形は相手先が倒産した場合には買い戻す必要に迫られますので、将来に債務となる可能性を秘めたもの(偶発債務)として管理を怠りなくしておかねばなりません。
    受取手形も正常な営業活動の流れの中にある資産でなければ流動資産となりませんので、不渡手形など回収不能となった手形は「投資その他の資産」の「破産更生債権」として別途表示しなければなりません。
  3. 売掛金
    売掛金とは、商品などを売上げた後、現金預金や受取手形として回収できるまでの間の債権で、受取手形と違って回収確実性は弱くなります。このため、顧客の信用状態の把握とともに、長期滞納が生じていないかなどの債権管理が大切です。
    売掛金管理は前月分、前前月分、3か月以前分、4か月以前分、5か月以前分、6か月以上などと区分し発生月毎に入金状況の管理をしておく必要があります(売掛金の年齢調べ)。また、得意先によっては信用調査機関から報告書を購入し、相手先の信用状況を把握しておく必要もあります。特に新規取引先など相手企業の経営者、会社資産、従業員の状況などが 十分に把握できていない場合には、慎重な対応が必要になる場合があります。
    倒産した企業の売掛債権は「投資その他の資産」の「破産更生債権」として表示しなければなりません。
  4. 有価証券
    流動資産で表示される「有価証券」は一時的な投資のための株(上場株式)、社債、国債などです。その中でも流動資産に表示されるものは、市場にて売却ができ、換金しやすいものに限られます。したがって、上場株式でも長期保有目的であれば「投資その他の資産」の「投資有価証券」として表示されますし、子会社など関係会社の株式も流動資産ではなく「投資その他の資産」として表示される必要があります。
『棚卸(たなおろし)資産』

棚卸資産とは、商品、製品、仕掛品、原材料などの在庫のことです。仕入れ先から購入、または自社で製造された販売前の在庫であり、売上げられる(販売される?)ことにより売上債権へ、そして債権回収により現金預金となり、資金化されるものです。

在庫の過剰は資金負担が多くなっていることであり、保管費などもかさみ、長期滞留在庫・不良品・陳腐化品のリスクも高まります。逆に過小すぎる在庫は納期遅れや注文の取り逃がしなどにもつながりますので、適正在庫管理は極めて重要です。昨年秋以降の急激な販売低迷に伴い大手自動車メーカーや家電メーカーは一斉に減産と在庫の圧縮体制に突入しました。あまりに急激なため工場休止や人員削減などの社会現象を引き起こしましたが、これは各企業が極めて精度の高い全世界レベルでの在庫管理システムを有しており、過剰在庫による倒産を未然に防ぐための企業防衛でもありました。
棚卸資産は実地棚卸にて現品在庫と帳簿在庫の一致・不一致の現品検査(棚卸)をする必要があります。決算月に限らず、重要品目は定期的に実地棚卸しておきたいものです。

そして、倉庫などに保管される在庫現品の整理整頓も大変重要です。長期滞留品・消費期限切れや季節遅れなどの陳腐化した商品、品切れ寸前の在庫の発見、在庫の散逸防止などに役立つと共に、従業員の在庫管理に対する意識向上にも役立ちます。

『その他の流動資産』

取引先や従業員への短期貸付金、出張・接待費などの仮払金、家賃などの前払費用、仕入れ先等への前渡金、利息などの未収収益などがあります。
『貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)』
売上債権や貸付金などの金銭債権の貸し倒れに備えるため、回収不能見込み額を、費用(または損失)として予め計上したものです。

会計上の処理 税務上の引当限度額
一般債権(税務上は一括評価金銭債権) 過去の貸し倒れの実績率から見積もる 大企業・・・過去3年間の貸し倒れ実績率から見積もる(実績貸倒率)
中小企業・・・法定繰入率と実績貸倒率の選択適用可
(法定繰入率の例)
卸・小売業・・・1%
製造業・・・0.8%
その他・・・0.6%
貸倒懸念債権(税務上は個別評価金銭債権) 貸倒の懸念の程度を個別の事情に応じて見積もる 個別評価金銭債権の要件別に、債権額より回収見込み額を除いた全額または50%相当額を見積もる。

上表のように会計上の引当額と税務上の引当限度額との間には差が生ずる場合があります。特に貸倒懸念債権として個別の事情により見積もる場合は、税務上の個別評価金銭債権の要件を満たしていない場合が多いのです。例えば、取引先が破綻する可能性が高まってきているが、未だ民事再生法の再生手続開始申立てに至っていない場合などは、貸倒の懸念は一般債権以上に極めて高いといえます。この場合、税務上は一括評価金銭債権としての取扱いとなりますが、会計上は個別に見積もった引当金を計上する必要があります。また、民事再生法の再生手続開始申立ての段階では、税務上は50%までの引当ですが、会計上はほぼ100%の引当が望ましいでしょう。
税務上の貸倒引当金繰入金限度額を超えて引当金を計上する場合は、超えた金額は税務上の損金とはなりませんので、法人所得に加算して、法人税を計算することになります。いわゆる「有税引当」です。

【固定資産】
『有形固定資産』
  1. 建物、機械、車両、備品(減価償却資産)

    会社の事務所、工場、倉庫などの建物(電気・給排水設備などの建物附属設備を含む)や機械装置、工具器具備品、車両、船舶、航空機などの減価償却資産が該当します。
    減価償却とは、使用することによって価値の減少する資産について、その取得価額を使用可能期間に費用として配分することです。貸借対照表に示されている金額(例えば建物の金額)は、取得した金額から毎年の減価償却費を控除した額が示されています。したがって、追加の投資がなければ、減価償却費分だけ減少していきます。 減価償却の方法は主に定額法と定率法があり、企業の選択によりいずれかを選べます(税務上、平成10年4月1日以降取得された建物については、定額法しか認められてはいませんので注意が必要です)。

    また、平成19年4月1日以降の取得について償却計算方法が改正されました。
    ここでは、平成19年4月1日以降の取得について説明します。リース資産については平成20年4月1日以降に締結されたものが対象になります。

    減価償却の方法 計算方法
    定額法 取得価額×耐用年数に応じた定額法の償却率
    (旧定額法の残存価額10%の考え方はなくなり、1円になるまで償却できます)
    耐用年数に応じた定額法の償却率
    2年・・・0.500
    5年・・・0.200
    10年・・・0.100
    50年・・・0.020
    定率法 (取得価額-既償却額)×耐用年数に応じた定率法の償却率
    (耐用年数終結時に償却を完了させるため、償却保証額と改定償却率の考えが導入されています。耐用年数の末期に近付き上記計算での償却額が償却保証額を下回る年度になった場合は、改定償却率を使用することにより償却が促進され、耐用年数終了時には償却が1円を残して完了する計算となっています。)
    耐用年数に応じた定率法の償却率
    2年・・・1.000
    5年・・・0.500
    10年・・・0.250
    50年・・・0.050
    リース期間定額法 (リース資産の取得価額-残存保証額)×当期の月数÷リース期間月数

    定額法と定率法の最大の違いは、初期段階での償却費の金額にあります。上表の償却率をみても定率法の償却率は定額法の償却率の2.5倍です。耐用年数2年の場合は、定率法では100%償却(初年度は月割ですが、年度当初に購入すれば1円を残して全額償却できることになります)となります。もちろん定率法の計算では償却費は年年減少していきますが、早期償却が可能な償却方法といえます。

    減価償却の効果

    減価償却により計算された減価償却費は、支払いを伴わない経費です。所得計算上も当然に損金として扱われます。このことは減価償却をとおして当初の投下資金を回収していることになります。減価償却の自己金融機能ともいいます。投下資金を減価償却によって回収していくことにより、将来の買換え資金を蓄積、又は設備資金の借入金の返済へ充当していくことになります。借入金で建物を建設する場合は、通常建物の耐用年数が長い(鉄筋コンクリート造りの事務所は50年)ため借入金の返済年数とバランスはとれません。かなりの利益が見込めない限りは、建物建設の場合は自己資金の比率を高めておくのが望ましいでしょう。

  2. 土地
    土地は使用に伴い価値が減少する性格のものではありませんので、減価償却の対象にはなりません。したがって、前述の減価償却の自己金融機能は働きませんので、借入金で土地を購入した場合は、借入金の返済財源は全て税引き後の利益となりますので、資金計画は慎重に立てる必要があります。
    また、遊休土地や不採算事業での工場、店舗などは「減損会計」の対象となります。
『無形固定資産』
  1. 営業権、特許権、ソフトウェアー等の償却資産
  2. 借地権、電話加入権などの非償却資産
『投資その他の資産』
  1. 投資有価証券

    有価証券は保有目的で分類します。

    保有目的 表示科目 評価方法
    短期売買目的
    時価の変動により短期的に売買し利益を得るための保有している株式等
    有価証券(流動資産) 時価法
    評価益、評価損ともに損益として計上する必要がある。
    税務上も同じ取扱
    満期保有目的
    国債、社債など満期まで保有する有価証券
    投資有価証券 償却原価法
    購入時の取得価額と額面金額の差額を保有期間に応じて取得価額に加減する方法
    子会社・関連会社株式
    グループ企業を支配するための株式
    投資有価証券 原価法
    ただし、業績悪化などにより著しく評価が下落したものは減損処理が必要となる
    その他の有価証券
    取引先など上記以外の長期保有目的の株式等
    投資有価証券 時価のあるもの

    時価法(ただし、売買目的の有価証券と異なり、評価差額は損益計算に反映させずに、純資産の一部として処理する方法)
    なお、著しい時価の下落の場合は減損処理の対象となる。

    時価のないもの

    原価法
    ただし、業績悪化などにより著しく評価が下落したものは減損処理が必要となる

  2. 長期貸付金
    取引先、グループ会社、役員、従業員などへの一年を超える貸付金
  3. 出資金、ゴルフ会員権

    同業者団体への出資金やゴルフ会員権などです。
    ゴルフ会員権は入会金、預託金などからなっています。会員権相場が著しく下落した場合は会計上では評価損の計上が必要ですが、税務上はゴルフ場が倒産した場合などで預託金の返還不能が確定した時点でしか損金となりません。
    ゴルフ会員権の評価損を税務上の損金計上時期に先立って計上している場合は、その評価損は損金として認められません。また逆に、すでに民事再生法などで預託金の切り捨てが確定しているにも関わらず損金計上していない場合は、繰越欠損金の消滅との関係で7年以前のものは損金とならない場合があるので要注意です。

    固定資産における償却資産と非償却資産を要約すると以下のようになります。

    償却資産 非償却資産
    有形固定資産 建物、機械、車両、備品 土地、建設仮勘定
    無形固定資産 特許権、商標権、ソフトウェアー、のれん 借地権、電話加入権
    投資その他の資産 長期前払費用 投資有価証券、長期貸付金、出資金、ゴルフ会員権
【繰延資産】

繰延資産とは、財産的な価値や権利を有していないが、将来の収益獲得に貢献するなど翌期以降に効果を及ぼす支出であるため、資産として計上できる会計上の資産です。財産的価値はないため、限定的にしか認められていません。

繰延資産の種類 会計上の償却方法 税務上の償却方法
会計上の繰延資産
1.創立費
2.開業費
3.株式交付費
4.社債発行費
5.開発費
会社の会計方針として定める期間で償却
(財産的な価値はないので、早期償却が望ましい)
任意償却
税務上の繰延資産
同業者協会の会館建設負担金など
建物賃貸時の権利金(返還されないもの)
ノウハウの頭金など

(実際は税務上の償却期間で償却)
償却期間の規定あり
財務分析
  1. 安全性
    1. 流動比率
      流動資産÷流動負債×100(%)として示される財務安全性を計る重要な指標の一つです。一般的には120%から150%あれば良好といえます。
    2. 当座比率
      当座資産÷流動負債×100(%)で示され100を超えれば資金的には優良といえます。100を越えるということは、一年以内に返済すべき債務に相当する現預金や売上債権を有しており、なおかつ、将来売上ることにより資金化できる棚卸資産を有しているといえるからです。
    3. 手許流動性
      何ヶ月分の現金を有しているかを示す指標です。中小企業の場合は1.5ヶ月程度必要でしょう。
      特に、経済情勢が不安定になればなるほど、手許流動性を確保しておきたいものです。突然の得意先の倒産による貸倒、従業員の退職に伴う退職金支給、金融機関からの融資の遅れなど資金ショートを招く要因はいたるところにあります。
    4. 売上債権と仕入債務のバランス
      業種業態によって異なりますが、売上・仕入ともに掛取引や手形決済の場合には、売上債権と仕入債務のバランスが崩れていないかどうか、分析しておく必要があります。
      1. 売上債権<仕入債務
        メリット
        売上代金の現金化の方が早いのでキャッシュフローに余裕ができる場合があります。
        デメリット
        将来の支払債務が多いので、財務の安定性に欠けます。
      2. 売上債権>仕入債務
        メリット
        現金預金も十分にある場合は、支払い債務が少ないので、財務の安全性は高く、良好な財務体質といえます。ただし、貸倒発生のリスクは高まるので、売上債権の管理には十分に配慮する必要があります。
        デメリット
        運転資金の不足分を短期借入金など有利子負債で補っている場合は、金利負担とともに資金繰りが窮屈となる。受取手形の割引や裏書等も必要となる場合が多いでしょう。
    5. 工事資金収支(建設業)
      建設業の場合の分析指標です。
      工事資金収支=(未成工事受入金+工事未払金+支払手形)-(未成工事支出金+完成工事未収入金+受取手形)で計算されます。
      すなわち、資金源泉である(未成工事受入金+工事未払金+支払手形)より資金運用である(未成工事支出金+完成工事未収入金+受取手形)が多くなると、建設会社側で工事費用等を立て替えていることになり、資金的に財務内容を圧迫する結果となります。
  2. 効率性
    1. 総資産回転率(期間)
      1. 総資産回転率 (年間)売上高÷平均総資産(期首総資産と期末総資産の平均額)
        年間の売上高を獲得するのに企業の総資産がどの程度貢献したかを示す指標です。
        比率が高いほど効率性が良くなります。
        「持たざる経営」とは投下資本を抑え、効率的に売上高(利益)を獲得する経営スタイルのことです。
        業種業態や企業特性により異なりますが、一般的目安としては1以上が必要です。
      2. 総資産回転期間
        平均総資産(期首総資産と期末総資産の平均額)÷(年間)売上高×12月 売上の何ヶ月分の資産を保有しているかを示します。上記(1)回転率の逆の式で計算されますので、回転月数の少ない方が効率的です。この式では、過剰資産の有無を分析できます。月数の多い方が過剰資産を抱えているということになります。
    2. 売上債権回転率(期間)
      1. 売上債権回転率
        (年間)売上高÷平均売上債権(期首売上債権と期末売上債権の平均額)
      2. 売上債権回転期間
        平均売上債権(期首売上債権と期末売上債権の平均額)÷(年間)売上高×12月
        回転期間の方が分かりやすいので、回転期間で説明します。売上債権とは受取手形と売掛金の合計金額です。なお、割引手形や裏書手形があれば受取手形に含めて計算してください。
        売上債権回転期間とは、売上の何ヶ月分の受取手形、売掛金を有しているかを示しています。月末締めの翌月末全額手形回収(手形サイト2ヶ月)とすると、売上債権回転期間は約3ヶ月です。
        注意点
        1. 会社の回収条件と対比し、売上債権回転期間が延びていないかどうか。売上債権回転期間の方が長い場合は債権の未収が発生している場合があります。
        2. 仕入債務回転期間より長い場合は、運転資金を負担している場合が多いので、資金ショートになりやすく短期借入金に依存する傾向にあります。金利負担も生じてくるため、回収条件の改善(手形回収より現金回収の比率を少しでも高める)や自己資本の増強(増資、利益の蓄積)による資金力の向上などが必要です。
    3. 棚卸資産回転率(期間)
      1. 棚卸資産回転率
        (年間)売上高÷平均棚卸資産(期首棚卸資産と期末棚卸資産の平均額)
      2. 卸資産回転期間
        平均棚卸資産(期首棚卸資産と期末棚卸資産の平均額)÷(年間)売上高×12月(365日)
        売上の何ヶ月分(何日分)の棚卸資産(在庫)を持っているかを示します。
        棚卸資産も、商品、製品、原材料などと細分化すればより詳細に分析できます。
        適正在庫を掴むためには必要な分析です。 注意点
        1. 過剰在庫、不良在庫の可能性
          商品の場合は、仕入れ額から分析するのも有効です。
          平均商品(月初商品と月末商品の平均額)÷当月商品仕入×30日
          何日分の仕入れに相当する商品を保有しているかを示しますので、経営者が想定している保管日数と比較して長い場合は過剰在庫や不良在庫の存在の可能性があります。
    4. 有形固定資産回転率(期間)
      製造業、倉庫業、ホテル業、病院など、設備を有する業種の経営効率を分析するのに有効です。
      1. 有形固定資産回転率
        (年間)売上高÷平均有形固定資産(期首と期末有形固定資産の平均額)
      2. 有形固定資産回転期間
        平均有形固定資産(期首と期末有形固定資産の平均額)÷(年間)売上高×12月
      設備を中心とした固定資産の効率性を分析します。遊休資産、稼働率の悪い設備、過剰設備があれば、この指標は悪くなります。
      効率性を高めるために、遊休資産を売却など身軽になる必要があります。これまでリース契約を活用し効率性をあげる場合がありましたが、リース会計の適用によりリ-ス資産を資産計上する場合には、取得の場合とほぼ同様の分析結果となります。
      リース会計については9月に解説予定です。
公認会計士 税理士 大西 均
社会保険労務士 折原 麻衣子

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