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2010年1月7日 更新 動向リサーチ

今年の漢字も「新」? 財団法人日本漢字能力検定協会が公募で2009年の漢字として「新」を選んだ。09年の応募数は過去最多の16万1365通で、「新」は最多の1万4093票(8.73%)を占め、2位は「薬」で1万184票、3位は「政」の5356票であったそうである。

「新」が選ばれたのは、「新しいこと」に期待し、希望を抱いた1年で、政権交代により新内閣が発足し政策、行政が刷新。裁判員制度や高速道路料金割引制度などさまざまな新制度がスタートしたこと。また、米大リーグ・マリナーズのイチロー選手や水泳競技での新記録ラッシュや、新型インフルエンザの流行したことなども理由にあげられた。
これを調査会社TSRから見ればどうだろう。

  1. 事業再生ADR、第二会社方式、DIP型会社更生法等新しい企業再生方法が本格的となった年。
  2. 新規上場件数が少なく、また新設法人設立も減少した年(08年は月平均8399社、09年は8064社)。
  3. 企業は国内市場が頭打ちで、新しい販路を海外に求め、本格的に進出した年。

大企業、中企業は倒産回避のため、黒字事業を切り離して事業を継続、または債権カットによる新しい再生手法を利用したが、大半の企業は不況から脱出できず、挙句の果て消滅型の倒産が多くなった。新しく会社を起業する人が少なく、国内のマーケットは低迷、販路を求めて海外進出する企業が多く、弊社TSRの海外調査(特に中国・東南アジア)が増加した。この傾向が強い昨年であったと思う。そして香川県の09年総括は、全国的に倒産は減少したものの、倒産件数、倒産負債総額増加率が共に全国ワースト1となるなどひどい1年であった。

それでは今年2010年はどうか?その前に12年前の寅年であった1998年の出来事に触れてみたい。横浜高校松坂大輔(現:レッドソックス)の快投で横浜高校が春夏連覇、高校野球は異常な盛り上がりを見せた。しかし一方では、日本版金融ビッグバンのスタートにより日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が倒産、他ノンバンク、不動産会社の倒産も発生、倒産負債総額・件数は戦後ワースト3となった年で、ありがたくない1年であったと思う。2010年については、年が始まったばかりで今の段階では何も言えないが、調べてみれば、今年はなにやら幾つもの「2010年問題」があるらしい。主な問題を上げてみれば、

  1. 稼ぎ頭である主力新薬の特許が2010年以降続々と切れ、安価なジェネリック医薬品に市場を奪われる公算が大きい。特に、ジェネリック医薬品の普及した海外ではその傾向が顕著で、海外売上比率の高い日本の大手製薬メーカーにとっては死活問題になるということだ。
  2. CMBS(商業不動産担保証券)の問題。商業不動産の収益を担保にした投資商品の償還時期が今年沢山控えているということ。償還時期を迎えるローンは、不動産を売却して返済するか、借り換え(リファイナンス)をするしかないが、ファンドバブルと言われた07年頃に高値で買った不動産なので、今の相場では売れない。また金融機関は証券化事業から撤退あるいは縮小しているため、ローンの借り換えも難しい。ということで、ローンのデフォルト(債務不履行)が急増、不動産の投売りが行われるのでは?と言われているが、不動産の投売りはなかなか起こり難いらしい。

CMBSとは聞きなれない単語であるが、実は米国の銀行はこの影響が主因で、133社が倒産、EUの金融機関も不良債権の処理損失が72兆円になったそうである。そしてもっと悪いのが、このCMBSの評価損が増加する可能性がまだまだあると言われている。

日本の金融機関もこのCMBSと2012年を目途にしたBIS規制の問題から、1998年の様に再び銀行の再編が起こりそうな気配がうかがわれる。産業構造の変化が求められる中、新しいビジネスの形成が必要で、今年も去年の「新」が再びキーワードとなるかもしれない。しかし、ニュービジネスが生まれようが、何時の時代も「虎の尾を踏まぬよう」に慎重なリスク回避が必要なのは言うまでもない。

株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長高松支社長 影浦 泰一

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