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2010年3月4日 更新 かがわ経済ナビ

農業における匠たち 今春、肖像をデザインした貨幣がわが国で初めて発行される。しかもその肖像は話題沸騰中の坂本龍馬だ。

明治新政府にとって、全国統一の通貨制度「円」の導入は、新しい国の円滑な経済活動を築くための最初の大事業だった。

新しい貨幣は、イギリスから機械設備を購入し、お雇い外国人の技術力で製造することになったが、世界最高レベルの外国人達は、江戸期の刀装金工師の力量に驚かされた。結局、貨幣の生命である貨幣の図柄の考案とその図柄を彫金する技術は日本の職人に委ね、和洋技術を合わせた貨幣作りが始まった。その職人・加納夏雄は、現東京藝術大学の教授となり、日本の彫金の基礎を築く。

実は、日本の貨幣製造に、高松工芸高校の多くの卒業生が携わり、今も、わが国の卓越した技能者”現代の名工“として厚生労働大臣から表彰された卒業生が活躍されている。

その高松工芸高校では、現在、金属加工などを行う工芸科をはじめ、多くの女子生徒が学んでいる。そう言えば、昨春、造幣局でも、日本七宝作家協会展覧会「学生の部」で受賞した女子学生が入局し、彫金に意欲的に取り組んでいる。彼女達ものづくりの匠の卵が、想像力や創造性を養い、日本の優れた技能を未来にリレーする雛に育ってくれると思う。

話は変わるが、四国各地を回っていて、農業の世界にも品質や品種に高い理想を追い求める匠がいることに気づかされる。

愛媛県に接木苗を生産する農業法人がある。経営者が長年の試行錯誤で築き上げた接木の独自の技能を基に、大学と連携して、光合成に必要な光、温度、二酸化炭素など人工的な環境を設定する植物工場を作り、自動化に頼れない要素は人が管理し、日本一の量の接木苗を栽培している。その商品価値は普通の苗の2倍から3倍だ。

また、高知県には日本一甘いトマトを栽培する農業法人がある。通常の糖度(5度程度)を大幅に超える糖度(最高13度)の”ウルトラ甘い“トマトが、ハウスで、魚や海草から採った豊富なアミノ酸を含む肥料が餌となり、乾燥地帯のイスラエルで開発された冠水装置で水が与えられ、生き物のように育てられている。このトマトジュースの価格は500mlで5000円超と、商品価値は通常の20倍以上だが、生産が追いつかない。

約20年前、米の自由化が大きな問題であった時代に、セスナ機で種をまき、薬剤散布する大農法をカリフォルニアで見た。味の批評はともかく、水田が地平線の彼方まで広がる桁外れのスケールに驚き、地形の高低差と水の流れを利用して苗が等高線を描くように育つ農法にアメリカらしい科学の力に感心した記憶がある。

四国の気象、地形等自然環境の中で農業の匠たちが築いた付加価値の高い作物や作り方には、工業製品に負けない国際競争力があると思う。より美味しいものを食べたい、健康で長生きをしたいと思う内外の消費者に評価される大きな可能性がある。

四国財務局長 河野 邦明

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