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【PRIME PERSON】「子育ての不便」を地域につないで「便利」をつくる - わははネット 理事長 中橋 恵美子さん

「子育てが楽しいなんて、ウソ。もっと外に出て自分の世界を広げよう。そうすれば明日の子育てはきっと楽しくなる」・・・・・・出産経験あり、出版経験なしのスタッフによる手づくり情報紙「おやこDEわはは」が、子育てに悩む若い主婦の共感を呼んだ。

1999年、仲間を募って「NPO法人わははネット」を立ち上げた理事長の中橋恵美子さん(41)は、子育ての不安を、情報誌と携帯メール、井戸端会議の場でつなぐ「子育て支援ビジネス」を成功させ、タクシー会社と協力して母子に優しい「子育てタクシー」を全国に普及させた。

「子育ての不便」を「便利」に変える発想力と行動力・・・・・・社会起業家 中橋さんの後ろを企業や行政が追いかける。

※(社会起業家)
社会変革と収益事業を両立させて起業する人。

子育ては、みんな不安

発想力と行動力の原点は、16年前の子育ての不安体験だ。茨城県つくば市で、初めての子育てに戸惑った。

「なぜ子どもが泣いているのか、食べてくれないのか分からない。外出先は近所のスーパーと公園。化粧もしない、ストッキングもはかない日が多くなりました」

小さな生き物に振り回される自分と、おかしいぞと感じるもうひとりの自分がいた。3年後香川に戻っても同じだった。

外に出て自分の世界を広げようと、仲間と子育て情報誌を創刊した。「編集室にしていた自宅のFAXがくるくるまわり、郵便受けから手紙がこぼれ落ちました」。子育てに悩む若い主婦からの反響に驚いた。

子育ては、つらく、切ない

出産して会社に復職した女性の長い手紙があった。

「ある朝、子どもの体が熱かった。休むと職場に迷惑がかかる。体温計を使うと熱があると分かるから、思い過ごしだと自分に言い聞かせて、保育園に預けて勤めに出た。昼過ぎに電話があって『朝から熱があったんでしょう、ちゃんと見てやらないとダメでしょう』としかられた。病院で先生に、家で夫にしかられて謝った。働きながら子育てしている私は、なぜこんなに頭を下げてばかりなんでしょうか」

「衝撃でした。ボランティア活動でいい気になっていた私は専業主婦です。仕事をしながら子育てする厳しさ、つらさを思い知らされたんです」。中橋さんは、その衝撃を行動に移した。「真鍋知事に、『おやこDEわはは』のインタビューを通してお伝えし、7カ月後、2001年4月、香川県で初めての『病児保育室うぐいす』が綾川町国民健康保険陶病院に開設されました」

子育ての切実な声を届けたら行政が動いた。達成感が弾みになって中橋さんの関心は、個人から地域社会へ、社会起業家へ向かった。

※(病児保育室)
保育園に通っている子どもが風邪などの軽い病気にかかり、集団保育が不可能になった場合に、その子どもを預かって世話をする施設。現在香川県内では▽高松市・トビウメ小児科医院付属病児保育室子どもの家▽高松市・西岡医院病児保育室レインボーキッズ▽高松市・小林内科小児科医院付属病児保育室すこやかルーム▽高松市・はらこどもセンター病後児保育室▽坂出市・総合病院回生病院▽善通寺市・カナン子育てプラザ21▽善通寺市・にしかわクリニック病児保育室げんきになあれ▽観音寺市・三豊総合病院病後児保育室わたっこ保育園▽東かがわ市・小児科内科三好医院病(後)児保育室チャイルド・ケアーシステム・エム▽土庄町・土庄町病児・病後児保育室げんきっこ▽綾川町・綾川町病児保育室うぐいす

携帯メールがビジネスモデルに

09年度経済産業省のIT活用事業に、携帯メール配信サービス「わははメール」が指定された。ビジネスモデルのノウハウを、希望するNPO団体に移管させる事業だ。

補助金をもらって携帯メール事業を始めたものの、赤字で困っているNPOが多い。組織が仲良しクラブ的運営で、ボランティアの営業活動は「悪」の意識があるからだと中橋さんは分析する。

なぜ「わははネット」が、補助金を一銭ももらわずに事業が継続できるか。横浜、京都、沖縄、福岡の4団体にノウハウを伝えた。

「他の組織との決定的な違いは、仲間と2人で200万円出資したことだと思います。出資者が意志決定権を持って、事業を継続するための経費は、営業収益でまかないます」

広告収入になる企業情報は、子育て主婦に共感してもらえる情報だけを選ぶ。イベント情報は、香川県を10ブロックに分け、子どもの年齢を月齢まで分けたきめ細かな情報だ。

「最初に居住エリア、年齢、月齢とニックネームを登録すると、例えば、坂出市の1歳6カ月や、丸亀市の2歳6カ月の子どもの母親だけに役に立つ情報が届くようにしています」。マスメディアや企業からではない、メル友の「ミカちゃん」からのメールが届くのだ。

※(IT活用事業)
経済産業省 地域新事業創出発展基盤促進事業「子育て・まち育てIT活用ハッピープロジェクト」

※(わははメール)
問い合わせ先Mail:info@e088.jp

※(ミカちゃん)
わははメール発信者の愛称

「不確かな口コミ・交流の場」をつくる

03年、井戸端会議の場「わはは広場」を開設したのは、情報誌や携帯メール情報に限界があるからだ。「お母さんたちが欲しい情報は、あそこの幼稚園の先生がどうだとか、PTA活動が大変だ、どこそこの病院はこんな噂がある、などネガティブなものも含めた情報なんです」

良いことも悪いことも不確かなことも、口コミ情報の真偽を見極める能力をもつためにも、人と触れ合う「井戸端」が必要だと中橋さんは言う。

「子どもたちの成長を喜び合い、本音で語り合え、悩みを相談し合う場です。支援されることもあれば支援者側になることもできる、ありのままの自分を受け入れてくれる、循環型の子育て支援の場を作りたいと思いました」

去年から国の地域子育て支援拠点事業が始まって「わはは広場」は、高松市の委託事業になった。

※(わはは広場)
▽わははひろば高松/高松市大工町1-4 TEL:087-822-5582
▽わはは子育て広場 ジャスコ高松店/高松市香西本町1-1 イオン高松ショッピングセンター TEL:087-822-5589
▽わははひろば坂出/坂出市元町4-1-1 TEL:0877-45-6586

子育てに優しいタクシー

中橋さんは、妊婦や母子の通院や送迎の不便をヒントに、「子育てタクシー」のアイデアを、タクシー事業者に提案した。

「ロゴを付けたタクシーが走っていると、よそから来た人は、香川県は子育てに優しいと思うだろうと、マークもデザインしました。画期的だと思いましたが、どこも、ノーでした」

介護タクシーは介護保険がつく。子育てタクシーは手間が掛かるが、割増料金はつかない。02年の規制緩和で競争が激化しているのに、男目線では、ニーズが見えなかったのだろうと、中橋さんは言う。

そこで04年、子育て主婦で花園タクシーの社長だった鎌野実知子さんと組んで「子育てタクシー事業」をスタート。06年、全国子育てタクシー協会を設立、現在は北海道から沖縄まで22道府県68社が加盟して、約850人のドライバーを育成して運行するまでになった。

社会貢献の企業化

365日24時間、ドア・ツー・ドアで移動するタクシーはすごいインフラだ。

「子ども虐待のSOSがあっても、元日の午前1時に迎えには行けない。タクシーはそれができます。それを『子育ての不便』につなぐと、『子育てタクシー』になったんです」

「わははメール」も「子育て広場」も国が後からついてきた。「子育ての不便」を「便利」に変える中橋さんは、企業にも子育て主婦にもプラスになる仕組みづくり、「社会貢献の企業化」に確かな手ごたえを感じている。

家庭円満

「世間のしがらみやリスクがないから、前例がないことを面白がってできる」。夫の政彦さんに言われた。自分でもそのとおりだと思っている。

結婚して16年、趣味は政彦さんの「追っかけ」だと、中橋さんは笑う。

「夫は現役を引退した柔道家で、2009年フランス、10年マルタ共和国であった世界柔道形選手権大会で、2年続けて優勝したチャンピオンです」。胸を張る。

政彦さんは塗装会社中橋産業(株)の経営者で、夫婦共に忙しい。「子育ても、夫婦の愛が基本です。毎月ゼロのつく10日、20日、30日を『ラブの日』にして、夫と過ごそうと言い続けていますが、これだけは、まだ実現していない」とほほえむ。

家庭円満が中橋さんのエネルギーの源だ。子どもの虐待が多いし、セックスレスが話題になる昨今だから、「ラブ」に触発されたサービスも、中橋さんは、実現するに違いない。

子育てタクシー三つのサービス

●乳幼児と保護者が同乗する「かんがるーコース」

チャイルドシートを設置してお迎えにいきます。

●お子さんが1人で乗る「ひよこコース」

保護者の方がご予約のうえ、お迎え場所、送り先を指示いただき、お子さんをお迎えに行きます。

●急なトラブル・夜中の移動などの「ふくろうコース」

夜中のお子さまや保護者の急な病気やけがの場合の、病院への送迎、近親者のご不幸など、事前予約が出来ない場合。

全国子育てタクシー協会事務局(NPO法人わははネット内)
TEL:087-816-5581 FAX:087-816-5582
Mail:info@kosodate-taxi.com

中橋 恵美子

中橋 恵美子
  • 1968年 香川県生まれ
  • 1989年 四国学院短期大学英語科卒業
    大成建設会社(株)四国支店入社
  • 1992年 同社退社、結婚、つくば市に移転、出産
  • 1995年 つくば市から坂出市に移転

公職

  • 独立行政法人 国立女性教育会館運営委員
  • 香川県社会教育委員
  • 丸亀市:男女共同参画審議会委員
  • かがわ子育て支援県民会議委員
  • 香川県福祉のまちづくり賞審査委員会委員

褒章

  • 2009年 にっけい子育て支援大賞(主催 日本経済新聞社)
  • ウーマン・オブ・ザ・イヤー2009 総合部門7位、リーダー部門5位 受賞(主催 日経ホーム出版社)

わははネット

所在地
高松市大工町1-4
TEL 087-822-5589/FAX 087-816-5582
http://npo-wahaha.net
承認 2002年
法人格 特定非営利活動法人
代表者 中橋 恵美子
目的 この会は、香川県内で子育てをする人々を対象に、子育てに関する情報提供をはじめとするあらゆる子育て支援を行い、男女参画社会の形成と大人も子どもも健全な生活を営めるまちづくりの推進を図る活動を目的とする。
監事数 1人
有給役員数 15人
事務局員数 5人
事業内容 子育て情報配信
子育て情報紙「おやこDEわはは」季刊2.5万部発行
子育て情報携帯配信サービス「わははメール」会員数4000人(2009年度)
つどいの広場「わはは広場」 坂出・高松3カ所開設

沿革

  • 1999年 4月 育児サークルわははネット設立
    子育て情報紙「おやこDEわはは」創刊
  • 2003年 3月 坂出市に「わははひろば坂出」開設
  • 2003年 6月 「おやこDEわはは」無料配布スタート
    年4回発行に
  • 2003年12月 「わははメール」配信スタート
  • 2004年 3月 四国の子育て団体が協力して、「子どもとでかける四国あそび場ガイド」発行
  • 2004年 9月 高松市に「わはは広場」開設
  • 2005年 3月 「子どもとでかける香川あそび場ガイド」発行
  • 2006年 2月 「'06~'07子どもとでかける四国あそび場ガイド」発行

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