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2010年6月3日 更新 動向リサーチ

徳島県発祥の企業ジオスが倒産。破産申請で授業料前受金が再び問題に 英会話学校を経営していた(株)ジオスが4月20日に破産を申請した。業界大手で個人を顧客としていたため、多くの受講生に影響が広がった。2007年10月に(株)ノヴァが倒産した際、前受分の授業料を生徒に返還できず問題となった。それから2年半、ジオスの破産申請で同じ問題が起こった。

ジオスの事業展開経緯

ジオスの教室は一般コースとこどもコースがあり、北海道から沖縄まで合わせて335校を展開、生徒数は約3万7000人にのぼっていた。一定期間分の授業料を学校経営企業が前受けする業界慣習のため、企業は入ってきた資金を基にしての経営を行うために資金繰りをたてやすい形態になっている。前受けによる手許資金で業容拡大のための投資も行いやすい。

しかし、投資相応の収入が得られなければ資金繰りが苦しくなるのは、どのようなキャッシュフローの企業でも同じだ。投資に失敗すれば、負担が先に来るか後に来るかの違いだけとも言える。

ジオスは、1973年に前身となる英会話学校経営の会社を設立してから、教室を増やして業容を拡大してきた。海外旅行者数が伸び、国際化が進んでいた背景もプラス材料だったのだろう。国内でも各地区に学校運営の法人を設立し、教材の出版を行う関連会社などもあった。それが、2002年に各地区の法人を合併したのを皮切りに、関連会社を次々と吸収している。経営効率化と言えば聞こえは良いが、それまでの拡大経営の転換点ともみられる。前年にはアメリカで航空機テロ事件が起き、その後には感染症流行による海外渡航規制が発生するなど、逆風要因も見逃せない。

業界大手倒産の影響

このような状況のなかで07年、業界大手のノヴァが倒産した。同社は資金繰りが悪化し、前受授業料の中途解約客に対する返戻金でトラブルが多発したことをきっかけとして遂に倒産。結局、顧客に解約金が戻ることは無かったため、業界のイメージが大きく悪化した。これを機に、それまでは1年を超える受講料の前受けも多くあったものが、長くても1年までの前受けに留めるよう、業界内の自主規制として改められた。

だが、顧客からの前受け分について補償を強制させる制度は無く、実態は企業の判断に任されている状況に変わりはなかった。

そして、今回のジオス倒産でもノヴァの時と同じように、顧客の前払い分が戻る見込みは無いとされている。自主規制で企業の前受けの期間を短くしたことにより、ノヴァの倒産に比べると、多少は影響の深さを抑えられただろう。だが、影響の範囲を抑える施策は、ノヴァが倒産した時から大きくは進展していない。

一般的に、サービスや商品購入によって顧客に前払いが発生する場合、たとえば建築業界では宅地建物取引業法によって手付金に保全措置が義務付けられており、商品券には前払式証票法によって保証金の供託制度がある。最近ではインターネット上の仮想通貨や換金性のあるポイントにも、業者の破綻時に備えた補償制度が検討されているようだ。

語学学校業者にも、ノヴァの前受金が問題化した後に、自主的な前受金保全措置を始めたところもある。今回のジオスの倒産によって、前受金保全が強制的な制度化に向けて進むのだろうか?法制化されなくても、既に広まり始めている企業独自の保全措置によって整備され、一方で、保全が講じられていない業者は淘汰されていくのか。受講者側にも経営内容が分かるよう、情報公開を進めることも必要ではないか。そうでなければ、語学学校の客離れは深刻になる一方だろう。

前受けで当座の潤沢な資金を手にしても、使途に結果が伴わなければ結局は破綻し、広範囲に被害を与える。前受金は、ファンドなどへの投資目的で集まってきた資金では無い。商品やサービスを購入するために払われたお金は、役務が実行されないのならば元に返さねばならない。

ジオスは、ノヴァ倒産の影響も受けて業界が落ち込むなか、前受金を食い潰してしまい、広範囲に被害を与える形で破綻した。

業界問わず前受金で売上をあげている企業には、その保全について真剣に考える必要があろう。

株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長高松支社長 影浦 泰一

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