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2010年7月15日 更新 動向リサーチ

全国395金融機関「中小企業等金融円滑化法」に基づく返済猶予実績(2010年3月末) 申込件数48万3862件、うち中小企業は43万3044件
申込件数実行率は四国地区74.9%(1万2889件)
謝絶率は四国地区1.4%

2009年12月4日、「中小企業者等に対する金融の円滑化をはかるための臨時措置に関する法律」(以下、金融円滑化法)が施行された。「金融円滑化法」で金融機関は中小企業や住宅ローンの借り手の申込に対し、出来る限り条件変更(元本猶予、返済期間延長、旧債借換え、デット・エクイティ・スワップなど)に応じることを求められた。東京商工リサーチでは、全国395金融機関(大手8行、地方銀行63行、第二地銀42行、信託銀行9行、ネット銀行他7行、信用金庫266金庫)を対象に、10年3月末の「金融円滑化法」に基づく返済猶予の実績を調査した。

395金融機関の「金融円滑化法」に基づく返済猶予の申込件数は48万3862件(金額12兆7906億5200万円)に達した。このうち、実行件数は35万3317件(実行率73.0%)、金額は9兆8692億7700万円(同77.1%)で、件数、金額ともに70%以上に達した。謝絶は7465件(同2074億200万円)で申込件数の1.5%にとどまり、審査中は10万2911件(同2兆3457億3700万円)。また、債務者の意思による申込撤回や倒産などによる「取下げ」は2万167件(同3667億1700万円)だった。

※金融機関は、1.埼玉りそなを含む大手行(8行)、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行、4.信用金庫は5月25日までにホームページ及び取材で公表されなかった6信金を除く。

中小企業 普通法人数の16.3%相当が申込み

中小企業(一般事業を行う個人を含む)の申込件数は43万3044件、金額は12兆229億5800万円。このうち実行件数は32万8197件(実行率75.7%)、金額は9兆4852億7300万円(同78.8%)で、ともに75%以上だった。一方、謝絶の件数は5956件(謝絶率1.3%)、金額は1851億7700万円(同1.5%)で、こちらは件数、金額そろって1%台にとどまった。

中小企業の申込件数を地区別に見ると、もっとも多かったのは関東の17万2783件(構成比39.8%)。次いで、中部7万3097件(同16.8%)、近畿6万4809件(同14.9%)、九州2万9373件(同6.7%)の順だった。最も少なかった北海道は9912件(同2.2%)で、1万件に届かなかった。

企業数に占める申込件数の比率をみるために、参考までに全国普通法人264万7369社(国税庁07年度資料)と比較すると、普通法人の16.3%が「金融円滑化法」に基づく返済猶予を申し込んだことになる。2008年10月に始まった「景気対応緊急保証制度」の10年3月25日実績の利用件数101万3435件と合わせ、重複の可能性はあるが、中小企業の相当数が支援策を活用している。全国の企業倒産は、1月に前年同月比21.7%減と大幅に減少、以降も2月17.2%減、3月14.5%減、4月13.1%減と2ケタの減少率を持続している。企業倒産の沈静化の背景には、「金融円滑化法」に基づく返済猶予の早期実行が中小企業の資金繰りに一時的な緩和をもたらし、大きな抑制効果があったことがうかがえる。

また、申込件数に個人企業を含むため単純な比較はできないが、普通法人数と比べ、岐阜県(43.0%)、富山県(39.5%)は普通法人の3社に1社以上が利用している計算になる。また、20%台は京都府、高知県、静岡県など14府県あった。

中小企業の実行率のトップは中部 謝絶率は地域間でバラつく

中小企業の申込件数の実行率は、中部が79.7%(5万8271件)でもっとも高かった。以下、東北78.5%(1万7635件)、北海道77.2%(7655件)、中国77.0%(2万115件)、北陸76.6%(1万3275件)、四国74.9%(1万2889件)、関東74.7%(12万9196件)、近畿73.7%(4万7793件)、九州72.7%(2万1368件)の順だった。

また、地区別件数の謝絶率は、九州(2.2%)、北陸(1.9%)、東北(1.7%)が高く、北海道、中国、四国が各1.4%。近畿(1.3%)、関東(1.2%)と続き、もっとも低かった中部は1.0%だった。九州、北陸に比べ中部は半分にとどまるなど、地域間でバラつきが大きかった。

中小企業の申込件数は信用金庫がトップ 業態別の実行率は格差広がる

中小企業の申込件数を金融機関の業態別にみると、大手行が6万6135件(構成比15.2%)、金額3兆2354億6200万円(同26.9%)、地方銀行が15万803件(同34.8%)、同4兆4741億9200万円(同37.2%)、第二地銀が5万4526件(同12.5%)、同1兆2987億700万円(同10.8%)、信用金庫が15万5926件(同36.0%)、同2兆9339億2300万円(同24.4%)だった。

信託銀行は1230件(同0.2%)、同684億3400万円(同0.5%)、ネット銀行他は4424件(同1.0%)、同122億4000万円(同0.1%)。

これに対し実行は、大手行が4万5748件(実行率69.1%)、金額2兆4946億900万円(同77.1%)、地方銀行が11万7328件(同77.8%)、同3兆6869億9300万円(同82.4%)、第二地銀が3万9933件(同73.2%)、同9773億4700万円(同75.2%)、信用金庫12万754件(同77.4%)、同2兆2685億8600万円(同77.3%)だった。件数の実行率では、信用金庫と地方銀行が77%台だったのに対し、大手行、信託銀行との業態間の格差が目立った。

1件当たりの金額は、申込では信託銀行5600万円、大手行が4900万円、地方銀行3000万円、第二地銀2400万円に対し、信用金庫は1900万円と2000万円を割り込んだ。

地場有力企業を中心に取引している地方銀行と中小・零細企業との取引が中心の信用金庫は、申込金額の平均はやや開きがあるが、早期実行で対応し、取引企業の資金繰りを支援する姿勢は共通しているようだ。


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「金融円滑化法」の施行より前に、取引企業の資金繰り支援のため積極的に返済猶予に取り組んだ金融機関もあった。返済猶予は全国的な動きになっているが、運用には形態別や地域間でややバラつきがあることがわかった。一方で、「金融円滑化法」の効果は直接的な返済猶予だけでなく、金融機関の債務者区分(格付け)優先だった取引姿勢に柔軟性をもたらしたとの声もある。

施行からほぼ半年を経過し、返済猶予の課題もおぼろげに見えてきた。金融機関は、返済猶予を申請した企業への新規(追加)貸出や、「再生計画」作成・経営改善にどう関わり、コンサルティング機能を発揮できるのか。取引企業数の多寡にかかわらず個別企業への細やかな対応が求められる。また、企業側は資金繰りが返済猶予の恩恵に浴している間に、業績改善や財務の再構築を問われている。

金融機関と企業の双方にとり、これから「返済猶予」は正念場を迎える。返済猶予が単なる窮状を糊塗するだけの利用であれば、”倒産の先送り“という厳しい現実が待ち受けているかも知れない。

株式会社東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 竹 茂和

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