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【PRIME PERSON】品質最高+「機能はそこそこ」レクザムの世界ブランド戦略 - レクザム 取締役副社長 住田 博幸さん

主力の電子機器から、金属加工、スキーブーツや地ビールまで事業分野を広げて創業50周年を迎えた隆祥産業(株)は、世界市場へ展開するため今年1月、社名を「(株)レクザム」に改めた。

1970年、2人の出会いが会社発展の始まりだった。新入社員の住田博幸(現取締役副社長 62歳)さんは、創業社長の故岡野 馨さんに「すみちゃん」と呼ばれ、信頼された。

日本のモノづくりは、品質や機能の世界最高水準を目指すことで収益を上げてきたが、中国をはじめとする新興国の台頭で市場の構造が変わった。しかしまだ、「水準」の見直しはできていないという。「機能はお客さんの要求を満たす範囲でいい。品質が良くて値段が安ければ後発メーカーでも勝負ができる」。これが、新興国市場を攻略する住田さんの戦略だ。

出会いの縁

高松高専を卒業して高松三越に就職、2年半後に退職した住田さんは、実家のホテル事業「マツノイパレス(当時は園芸会館)」を短期間手伝っていた。「食事に来ていた岡野社長(当時)と知り合いました。電子関連企業の経営者でもないのに、いきなり世界最先端の半導体基地シリコンバレーに視察に行くというんです。誘われて、おもしろいと思って、まだ社員でもないのに一緒に付いて行きました」

金属加工や合成樹脂材料の卸しが主力の隆祥産業には、当時は電子工学の技術者がひとりもいなかった。エレクトロニクス関連業種の台頭期を目の当たりにして衝撃を受けた住田さんは、日本に帰ってから採用通知を受け取った。

「新聞の見出しに、電子やICという言葉が増えてきたから、アメリカへ見に行ったのだ・・・・・・」。新聞が好きで、毎日5、6紙読んでいた、起業家、岡野社長の直感力に驚いた。

「とにかく何でもいいから電子を応用した製品を開発しろ。これからは電子の時代になる」。岡野社長は、まだ若い住田さんに激(げき)をとばし続けた。

創業社長が亡くなって25年。2代目社長を奥さんの袿子さんが務め、3代目社長は息子の晋滋さん(49)が継いだ。

会社の歴史50年。前半25年で創業社長が基礎を作り、後半25年は住田さんの陣頭指揮の下で総資産300億円以上、設計・開発250人のエンジニアを配する「開発型企業」に育ててきた。

※(高松高専)
1962年に設置され、2009年まで存在した高松工業高等専門学校。高松市にある国立高等専門学校で、09年詫間電波工業高等専門学校と統合し、香川高等専門学校となる。

※(シリコンバレー)
米国カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置しているサンタクララバレーおよびその周辺地域の俗称。

しかられなかった

超カリスマといわれたワンマン創業社長に、社員がしかられ怒鳴られるのは日常茶飯事だった。しかし住田さんだけには、別人のようだった。

「しかられた記憶がないんです。2人きりになると会社や家庭の内輪話をポロッとしゃべっては、『経営者は孤独でないといかんのに、すみちゃんにはつい何でも喋ってしまう』とこぼしていました」

昇進は早かった。入社14年目、取締役電子事業部長に指名されて仕事を任されたが、命じられた目標設定のハードルは高かった。

技術者根性に岡野社長が火を点けた。「出来ないとは言わないのがモットー」の住田さんは、会社の礎(いしずえ)となる、電子回路を応用した機器の設計から客先への売り込みまでを頑張った。

「本当にしんどかったですね。日付を空けた辞表を机の引き出しに入れて仕事をしていました」。任された仕事の面白さと肩の荷の重さの葛藤(かっとう)にあえいだ。辞表を覚悟の責任感が、岡野社長の信頼を勝ち得たのだと思う。その信頼が住田さんの仕事を大きくしたのだとも思う。

「社長は会社のトップですが、部署のトップは私です。社長に相談はしましたが、自分の考えで仕事を進めました」

「なぜしかられなかったのか」。岡野社長の冷徹な経営判断だったと、今、住田さんは振り返る。

製造も販売も中国で

1996年、中国に合弁会社を設立。現在の海外拠点は中国(2カ所)、タイ、アイルランド、チェコの合計5カ所になった。生産量の比率は、国内1海外2。販売先は国内3海外1。主に海外で造って国内で売る事業構図だ。

「今後、海外生産の比率が増えるかどうかは不確定だが、販売比率は確実に国内が減って海外が増えるでしょう。成長する新興国市場のニーズに対応できないと会社は生き残れません」

住田さんの予測どおり、中国のビジネスモデルが「製造拠点」から「消費市場」へ変わってきた。

世界市場へ、新事業・新製品

独自技術を誇るのが、エシュロールやローデンストックなど、世界の有名ブランドの検眼器としてOEM供給しているオプトメカトロニクス(光学測定と高速画像処理)製品だ。

「1987年に開発を始めたわが社は、この業界では後発メーカーです。しかし現在、正確なデータではありませんが、おそらく世界のトップシェアでしょう」

高さが6メートルの巨大ロボットの開発も進めている。液晶テレビ用の、厚さ0.7ミリ、一辺3メートル余のガラス板を、割らずに運べるロボットだ。試作機も完成した。

「これはレクザムブランドの商品です。自社ブランドを今後さらに増やしたいですね」。売り上げ310億円のうち、10%弱しかない自社ブランドを、5年で30%に上げる計画だ。

去年から、国の助成金をもらって、糖鎖(とうさ)の研究にも取り組んでいる。食物アレルギーの抗原を検出するバイオセンサー計測システムの開発のためだ。

「電子工学とバイオは関係ないように見えますが、適切なバイオセンサーで、抗体反応を物理的な現象に変換さえできれば、後の処理は電子屋の出番です。だからバイオセンサーの部分はポストドクター制度を利用してバイオの専門家に入社して貰い、実用化の開発実験を進めています」

既存の検出法は、ランニングコストが高く分析時間も長いなど、中小企業が多い食品メーカーの負担は大きい。開発に成功すれば、検出装置の「小型化・高精度化・低コスト化」が可能になって、食品工場や給食センターの安定したニーズが見込めるという。

※(エシロール)
めがねレンズの世界トップメーカー。フランス。

※(ローデンストック)
130年以上の歴史を持つ、総合光学機器メーカー。ドイツ。

※(糖鎖)
ブドウ糖や、ガラクトースといった多様な種類の糖が特定の配列で鎖のように連なったもので、細胞同士の情報交換(レセプター)として重要な役割をもっている。

※(抗原)
生体内に侵入して抗体をつくらせ、その抗体とだけ結合して反応する物質。一般的には身体に悪影響を及ぼすような反応をアレルギー、過敏症と呼ばれる。

※(ポストドクター制度)
公的機関や企業の、定職に就けない博士学位取得者や博士課程学生に対する支援

品質最高+機能はそこそこ

新興国の台頭で世界市場のビジネスモデルが変わった。「機能をいっぱい付けた最高級品を追求するのは、メーカーの自己満足にすぎません」

世界に自社ブランド製品を供給するための、住田さんの戦略は明快だ。品質は最高、機能はそこそこでいい。価格は最高級品より少し安いこと。顧客を満足させる「必要十分条件」こそが、世界市場攻略のポイントだ。

人の出会いが縁となって、創業社長の直感力と冷徹な経営判断で、負けず嫌いの技術者から企業家へと培われた住田さんは、未知の分野に「後発」のハンディを乗り越えて参入する。

※(必要十分条件)
数学用語。ある事柄が成り立つためには、必ずなくてはならない条件「必要条件」と、その条件で必ずあることが成り立つような条件「十分条件」の二つを兼ね備えた条件。ここでは顧客の経済性を満たさないと、「いい技術」が受け入れられるとは限らないという意味。

社名をレクザムに変えた理由

20年前から販売している、スキーブーツのブランド名「Rexxam」を社名にした。前から三字「Rex」は、英語で王様とか王者を意味するし、後の三字「xam」を逆に読むと、”最大“の「Max」だ。

おまけに「Rexxam」の”R“は、「隆祥 Ryusyo」の”R“と同じで、欧米人には発音しやすい社名だと住田さんはいう。

「『隆祥』という社名は、中国では縁起のいい名前で、日本の会社だと思われない。同朋の台湾の会社だと勘違いされました」

自社ブランドを世界に展開するためにも、若い技術者の採用にも「隆祥」では無理があるというのが住田さんの持論だった。

大失敗

住田さんの大失敗は、碁盤(ごばん)の製造販売だ。

「スキーブーツも地ビールも異分野事業に見えますが、創業以来の合成樹脂の卸業や機械加工に、根っこはつながっています。でも碁盤は毛色が違い過ぎましたね」

職人的な碁盤つくりの事業化だった。中国から輸入した原木を乾燥してから製材した。「乾燥には数年を要することがあり、その間に3割くらいはヒビ割れしますから、難しいんですよ」。全国の政令都市と高松市内等に、ショールーム兼販売店を置き、売り上げは日本一の碁盤屋だった。

「碁盤が好きな人は、碁盤を持っていてもまた欲しくなるんです。何十万円なんて大したものではなくて、何千万円というのもあります。ちょっといいなといえば、2、3百万円です」

囲碁の愛好家が電話回線を通じて、家のテレビで碁を打てるシステムを開発、会員制で全国展開をしていた。「1990年ごろ、信号を送ったときだけに課金するパケット通信方式が始まったので、それに目をつけたんです。日本中ならどんなに離れたところでも、一手50~60銭で、仮に200手で2時間も繋ぎっ放しでも通信料は100円余りしか掛かりません」

しかし、予想もしなかったインターネットの普及で無料対局の競合が現れたのでダメになった。

碁盤も粗利は見込めるが、全国に設置したショールームの維持費用や広告宣伝費などの販売経費がかさんで、赤字つづきなので止めたという。

「そんなことで、懲りはしません。リスクの無いところには利益は期待できないので、ニーズを見つけてビジネスモデルと商品を次々考えればいいんです」。住田さんは、笑いながら回想する。

住田 博幸

住田 博幸
  • 1947年 高松市生まれ
  • 1968年 国立 高松工業高等専門学校 電気工学科 卒業
  • 1971年 隆祥産業(株)入社
    (電子回路の設計業務)
  • 1985年 取締役 電子事業部長に就任
  • 1989年 常務取締役 香川工場長に就任
  • 2000年 取締役副社長、生産本部長に就任
  • 現在に至る

レクザム

所在地 <本社>
大阪市中央区南本町2-1-8
<香川工場>
高松市香南町池内958
TEL 087-879-3131
http://www.rexxam.co.jp/
設立 1960年1月
代表者 代表取締役社長 岡野 晋滋
資本金 4880万円
売上高 310億円(2009年度)
従業員数 約1100人(国内関連会社含む)
事業内容 エレクトロニクス応用製品、自動車部品、精密機械加工品、スキー・スノーボードブーツ、ビールの開発、設計、製造、販売
事業所 本社・大阪営業所、香川工場・香川営業所、愛南工場、東京営業所、名古屋営業所、香川ブルワリー、スポーツ事業部、綾川工場
海外事業所 レクザムアイルランド(株)、レクザムタイランド(株)、レクザムチェコ(株)、蘇州隆祥電子有限公司、中国/昆明事務所、深圳先隆電子実業有限公司

沿革

  • 1960年 大阪市南区に隆祥産業株式会社設立
  • 1968年 製造部門拡大のため香川県香南町(現高松市)
    に香川工場設立
  • 1986年 オートレフラクトメータ(眼球屈折率自動測定器)
    の商品化
  • 1993年 スキーブーツ業界に進出、「REXXAM」発表
  • 1995年 中国での合弁会社を設立(7社の合弁会社を設立)
  • 1996年 国際品質保証規格であるISO9001を認証取得
    香川県初の地ビール(さぬきビール)製造を開始
    深圳先隆電子実業有限公司の設立
  • 2000年 鉛フリー半田を使用したフロー工程を業界に先駆けて実用化
  • 2001年 隆祥ヨーロッパ工場(Ryusyo Industrial IRELAND:RIIR)の設立
  • 2002年 GENIUS社(タイ)と業務提携(現社名 フォース社)
  • 2003年 蘇州隆祥電子有限公司の設立
  • 2004年 REME社(チェコ)と業務提携 生産開始
  • 2007年 隆祥タイランド社(RyoSyo Thailand Co.,ltd)の設立
    深圳先隆電子を移転(生産能力を2倍に増床)
    株式会社レクザム電子四国の設立
  • 2008年 愛南工場の設立(愛媛県)
    レクザムチェコ株式会社の設立
  • 2009年 レクザム香港株式会社の設立
  • 2010年 株式会社レクザムに社名変更(創立50周年)
    香川県営球場の命名権を獲得、愛称は「レクザムスタジアム」
  • 現在に至る

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