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【PRIME PERSON】低炭素社会実現を目指して - 四国電力 取締役社長 千葉 昭さん

瀬戸大橋で四国に渡る。番の州高架橋にかかると左手に、坂出LNG基地の巨大なタンクが見える。日本で最大級、18万キロリットルの液化天然ガス(LNG)を蓄える地上式タンクで、今年3月から営業運転を開始した。四国電力の中長期経営を支える設備でもある。

「将来、四国で使うLNGのすべてを、ここから供給したい」・・・・・・昨年6月、社長に就任した千葉 昭さん(64)の夢だ。

千葉さんは、常盤百樹前社長に「統率力」を評価され、安定供給と経済性、環境保全を使命とする四国電力の経営をゆだねられた。人口が減りつづける四国。電力市場の競争はますます激化する。四電グループ従業員1万人余を率いる千葉さんへの期待は大きい。

鉄塔が倒された

1998年2月20日、坂出市聖通寺山の送電用鉄塔が、何者かにボルトを抜かれて倒壊した。番の州工業地帯や、近辺の1万7千戸が停電した。

応急措置で送電を再開、短期間で完全復旧させたことが「統率力」の証しとされた。しかし、千葉さんは、事件発生直後の自分は非力だったと反省している。

「鉄塔が倒されて、坂出発電所が発電できなくなった。直後は混乱状態でした。当時高松支店長だった私が、責任者として覚悟を決め、計画的に取り組みが進められるようになったのは1日半後でした。その後は、組織を総動員して対応しました」。100日間での鉄塔建て直しは、前例がなかったという。

社長に就任して以来、2年がかりで80カ所余りの事業場を回り続けている。「鉄塔倒壊事件で、パニックになったことをありのまま話しています。『緊急時における平常心、平常時における自然体』は、私自身への教訓です」

率直な反省談が、危機管理のノウハウ「失敗情報の知識化」に一番いい教材だと考えている。穏やかで確信に満ちた口調だ。

LNG基地の役目

坂出のLNG基地は、総合エネルギー企業としての基盤を強化するための拠点だ。石油からLNGへの転換工事を終えた坂出発電所への供給も始まった。

「CO2対策としても重要な拠点です。化石燃料の中でLNG火力発電は、最もCO2の排出量が少ない方式です。LNGを四国ガスさんへ卸売りもしますし、産業用に工場へ供給もします」

四国ガス(株)にとって、仕入れ先が増えて原料供給が安定するし、四国内で調達できるから輸送コストも減らせる。共存共栄関係でありながら、一方で競争相手でもある。四電は、「オール電化」で石油やガス市場に進出しているからだ。

「『エコキュート』を軸としたオール電化をはじめ、様々な分野での電化促進を通じて低炭素社会の実現に貢献したい」

エネルギー利用の電力シフトは、省エネにつながると同時にCO2排出削減に対する近道にもなると主張する。自信にあふれた表情だ。

※(坂出のLNG基地)
坂出LNG株式会社。四国電力70%、コスモ石油20%、四国ガス10%が出資。

※(オール電化)
調理、給湯、冷暖房などをすべて電気によってまかなうこと。

※(エコキュート)
ヒートポンプ式給湯器。空気熱の交換で、投入した電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーが得られる。

業界の優等生

電力会社10社の中でも、四電の業績は、安定しており、株価も堅調だ。

「原子力発電の比率が高く、順調に稼動していることが大きな要因です。発電コストが一番安いし、しかも運転中のCO2排出はゼロです」

10社平均の原子力発電比率は29%(2009年度)だが、四電は41%で、原油高騰の影響を受けにくい体質だ。

「原子力発電は、安全が基本です。四電は安全文化が経営トップから従業員まで、DNAとして染み付いています」

業績を自慢するでもなく、千葉さんは安全DNAを何度も強調した。

海外事業

中東のカタールで、270万キロワット級の「ラスラファンC 発電・造水プロジェクト」に、参画して従業員を派遣している。来年5月、営業運転を開始する予定だ。

「火力発電所を、次々と国内で建設できる状況ではありませんから、運転・保守の技術力の維持・向上を、海外で進めるという狙いもあります」

また今年5月には、オマーンで「オマーン電力・水調達会社」の、2カ所の発電プロジェクトの事業権も取得した。

「海外投資は政治や為替のリスクがあり、慎重に進めていく必要がありますが、当社が有する技術や人材、資金を活用して、将来の成長につなげていきたいと考えています」。千葉さんは表情を引き締めた。

ブランド力と経営資源を生かす

「原子力を柱にすえて、LNGや自然エネルギーの電源比率を上げてCO2排出削減に対応する。ブランド力と経営資源を活用して電力事業以外での収益機会も拡大する」・・・・・・エネルギー間競争や地球温暖化問題への対応で経営環境が大きく変わろうとする中での、四電のグループ事業戦略だ。

情報通信やビジネス・生活サポート事業にも積極的だ。

情報通信事業は、(株)STNet(高松市)、(株)ケーブルメディア四国(高松市)、ケーブルテレビ徳島(株)(徳島市)がある。「STNetの光通信サービス『ピカラ』を中核として、3社の連携で、インターネットと電話とテレビをセットにした『トリプルサービス』を展開しています」

ビジネス・生活サポート事業は、高松や松山の有料老人ホーム経営や、宇多津町学校給食センターのPFI参入、松山の「坂の上の雲ミュージアム」など公共施設の運営受託だ。「当社グループの人材が活用できますし、四電グループが手掛ける『安心感』が好評です」

四電グループ企業への信頼を得るため、利益は少なくても、地域に貢献できる事業に取り組む。それが1万人余の従業員の将来につながる。千葉さんはブランドへの信頼の重要さを認識している。

※(ピカラ)
STNetが敷設・運営する個人向け光通信サービス。

※(有料老人ホーム)
(株)よんでんライフケアが運営する「アミーユよんでん栗林」と「アミーユよんでん道後」

※(宇多津町学校給食センター)
(株)宇多津給食サービスが運営。PFI「民間資金活用による社会資本整備」方式の施設で、四電工、四国電力、合田工務店、四電技術コンサルタントのほか、給食サービス事業を展開するメフォスの五社で設立した特別目的会社。町内の保育所、幼稚園から中学校まで、1日約2100食を供給している。

※(坂の上の雲ミュージアム)
松山市にある博物館で、同市が取り組んでいる司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」を軸としたまちづくりの中心を担う施設。

使命と誇り

四電の市場基盤は四国だ。人口が減って経済成長も難しい。今後10年間、販売電力量の年平均伸び率を、過去最低の0.4%と見込んでいる。

家庭用電力は自由化されていないが、コージェネレーションシステム導入などでガス事業者との競争も激しくなる。

どんな事業環境の変化にも耐えられるよう経営基盤を固めて安定供給に努める。低炭素社会の実現を目指して重要な役割を担う・・・・・・千葉さんの使命と誇りは、四電グループ1万人余と同じだ。

※(コージェネレーションシステム)
天然ガスなどを用いて、家庭や事業所などの電力や熱が必要な場所で発電し、その際に発生する廃熱を冷暖房や給湯などにも利用するシステム。

ゴルフは「適正電圧」で

千葉さんの、ゴルフは適正電圧だという。スコアを聞かれると決まってこう答える・・・・・・「家庭用電力の適正電圧は101ボルトプラスマイナス6ボルトで、これは法律で定められています。つまり95ボルトから107ボルトが適正電圧です。だいたい私のスコアはこの範囲ですが、調子が悪いときは、地元銀行の114です」

気さくな人柄で人望の厚い千葉さんは、高校生時代(高松高校)、学友に背中を推されて生徒会長を務めた。親分肌で正義感溢れる若者の一人であったに違いない面影が今も残っている

その一方で、立候補前に校長と談判して、実現できる公約を掲げて立候補したという逸話の持ち主でもある・・・・・・頭脳的な戦略家だ。

千葉 昭

千葉 昭
  • 1946年 高松市生まれ
  • 1969年 京都大学経済学部 卒業
    四国電力株式会社 入社
  • 1997年 四国電力株式会社 高松支店長
  • 1999年 四国電力株式会社 取締役企画部長
    四国電力株式会社 電源立地推進本部本部員
  • 2003年 四国電力株式会社 常務取締役 情報通信本部長
  • 2005年 四国電力株式会社 取締役副社長
    四国電力株式会社 総合企画室長 広報部担当
  • 2009年 四国電力株式会社 取締役社長

四国電力

所在地 <本社>
高松市丸の内2-5
TEL 087-821-5061
http://www.yonden.co.jp/
設立年月日 1951年5月1日
資本金 1,455億円
売上高 4,927億円(2009年度 単独)
従業員数 4,549人(2010年3月31日現在)
主要設備 ○水力発電所:58ヵ所(114万1千kW)
○火力発電所:4ヵ所(350万1千kW)
○原子力発電所:1ヵ所(202万2千kW)
○太陽光発電所:1ヵ所(0.3千kW)
○風力発電所:1ヵ所(0.3千kW)
 合計:65ヵ所(666万5千kW)
○送電線(回線延長):6,363km
○変電所:208ヵ所 2001万kVA
○配電線(電線延長):165,577km

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